遠人記

遠人記

古の海辺から始まる幻想譚。
微睡の中で見る夢、憧れ恐れ愛することがらの数々、善と悪/虚と実、それを超える「理≪ことわり≫」を縦糸と緯糸に織り込んだ長い物語。

おはなしはこんなふうに始まります。

──龍神への生贄となった聞き耳の娘は、波と飛沫の間を旅して戻ったという海から現れた男に助けられる。
鳥や獣や木々の心の声を聴くことができる娘だが、この男の心だけは聴こえなかった。